12/27/2015

タラソフ氏のElody講座を受けてみた




リコーダーの音量や音色にちょっとばかり不満を持っているためかもしれない。
1、笛膜を使用して音にビビり音を加えたり。2、楽器に小型マイクを取り付けアンプで音量を拡大してみたり"ER"(Electric Recorder) 、3、EWIと呼ばれる木管楽器風なシンセサイザーを導入したりしているが、いまのところ決定打がない。そんな中ヤマハのリコーダーフェアにモーレンハウアー社のタラソフ(Nik Tarasov)氏が来日し、Elodyの講座を行うのだという。

Elody はモダンリコーダーにピックアップを仕込んであり、その電気出力をエフェクターで加工しアンプで出力する。
楽器自体にいろいろデザインされたペイントがほどこされているが、原理的に見れば、リコーダーに近接マイクを取り付けたと考えることができる。ここまでだと私の実験している"ER"(Electric Recorder)と同じことになるが、YouTube など見てみるとギター用のエフェクターを使いいろいろな音を出している。これは使えるかもしれない。
ヤマハに講座の聴講ができるのか問い合わせたら、聴講はやらないが、講座はまだ空きがあるとの事、この際とばかり思い切って申し込んだ。平日で仕事だけれど早めに切り上げて駆けつければ間に合いそうだ。

当日は思ったより早めにヤマハに到着、少し時間に余裕があったのでリコーダーフェアの会場に行ってみた、リコーダーがずらりと並ぶ中、モーレンハウアー社のモダンリコーダーを手に取ってみる。外観は装飾を取り去った簡素な感じ、足部管は円筒形で延長したような形。フルートにHまで出る足部管というものがあるが、それと同じ発想のような足部管だ。大口径の孔をふさぐためのキーが並んでいる。試しに全部の孔を塞いで息を入れると低音がバリバリ鳴ってびっくりしてしまった。
昔フルートを吹いていた頃最低音の"C"は鳴りにくい音で、弱々しい音しか出なかった、ところが上手い人が吹くとバリバリ鳴るのでいつかはそんな音を出してみたいと思ったが結局果たせないままフルートは断念したのだ。
憧れの音が簡単に出てしまうので嬉しくなって何度もバリバリを鳴らしてしまった。テレマンなどのオリジナルな曲の演奏にはそれ程有効とは思えないが、他の楽器のための曲をアレンジして演奏する場合は、絶大な力になるだろう。Elody はこの延長線上にあるのだ。

講座は小さな演奏室で行われた。片側の壁が鏡になっているのでちょっと恥ずかしい。
半袖のTシャツ姿のタラソフ氏は気さくに招き入れてくれた。とりあえず握手したが、挨拶まで通訳さんにお願いする始末。実に情けない。通訳の方は私の高校時代の先生に似ている方だったが、丁重で好感の持てる通訳で、私もビビる事なく質問できた。
エフェクターはiPadをドッキング式のインターフェイスにつなぎ、アプリはダウンロードしたとのこと。(多分 iTrack Dock , Ampkit +  )アンプは小型のスピーカー付きギターアンプを使用していたが、出力は十分出ていた。


タラソフ氏はどんどん演奏してくれる。出てくる音と曲種が合えばかなり面白い結果が得られる。オクターブ低くなるエフェクタもありこれも使えるかもしれない。備え付けのElodyであなたも演奏どうぞ。ということなので「ダニーボーイ」をニニロッソ風に演奏、音はトランペットでと注文すると、それは出来ないとのこと。「最初から音を合成するわけではなく、元の音に変化を付けるだけだから。」了解!
「そういうことならEWIがありますよ」とタラソフ氏 ありゃ!ここでEWIの話が出るとは思わなかった。

ハウリングマージンはどれくらいかと聞くと通じない、和製英語かもしれない。通訳さんも解らなかったのかも、私の説明を翻訳してくれている。タラソフ氏がフィードバック フィードバックなどと言っている 通じたんだ。早速エフェクトを指定し音量を上げて行くと、ビビビと発振しはじめた。そうかElodyでもハウリングがあるんだ。妙に納得。
ピックアップは何を使っていますか? 答えマイクロホンではない、ピックアップであるとのこと。ここは詰め切れなかった。出力は一芯シールドのフォンプラグ。コンデンサーマイクではないし、電池は使っていないようだからエレクトレットマイクでもない。まさかダイナミックマイクではないだろう。ラビュームのちょっと下側、右側面にコネクタがあるのだが、ピックアップは内管部まで貫通していないらしいのだ。表面側から採音しているのだろうか?これ以上は自分で調べるしかないだろう。
ピックアップ位置について意見を交わした。私の実験しているERはラビユームのちょっと下側右と伝えると、タラソフ氏はウインドウェイの上側が良いと言う。多分Elody開発でいろいろ実験した結果だろう。私が持参したER用小型マイクを見せると、興味深そうに手に取ってモダンリコーダーに取り付け実験してくれた。
ちょっと心配したが、問題なく動作し、音質もなかなか良いとの評価をしてもらった。ただハウリングマージンはElodyより劣っている。
リコーダーの表面に取り付けられたマイクは周りの空気の音を拾いやすいのは当然の結果と納得できる。しかしまだ改善の余地は十分あると思う。

Elody への私の評価
リコーダーの音を電気を利用して拡大することは、だれでも考えそうなことであるが、一歩進めてピックアップを楽器に埋め込みハウリングマージンを稼ぎ、巷に数多く出回っているギター用のエフェクタを使用して若者にも好まれる音色と演奏しやすさを実現できていることは大いに評価してよいと思う。そのための奇抜なデザインもある程度は理解できるけれども少しやり過ぎのような気がするし、価格もちょっと高すぎないかな。

注、ハウリング
マイクで音を拾いアンプで拡大してスピーカーを鳴らすわけだが、スピーカーから出た音をまたマイクで拾ってしまうと信号がアンプ回路の中を駆け巡り、発振してしまう、スピーカーにマイクを近づけるとキーンと音が出ることがあるが、それがハウリング。
一般的にはスピーカーとマイクを離せば解決する。スピーカーの音がほとんどマイクに届かなければよいのだ。

ところがElody やERの場合かなり条件が異なる。演奏者にはリコーダーの音が聞える、しかしそれはただのリコーダーの音色、スピーカーから発せられるエフェクトの効いた音が同等あるいはそれ以上に聞こえてこそElody を演奏していることが実感できるのだ。だからより高度な耐ハウリング対策が必要になる。

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