5/18/2014

リコーダーとチューナー その3

完成したマイクをアルトリコーダーに取り付けた

リコーダーの音程を確認するため、チューナーを併用しているが、周りの音に影響を受けて混乱してしまうことがある。それを避けるため普通はピエゾ素子にコンタクトマイクを使用すれば避けられるが、リコーダーの場合は楽器自体の振動が少ないため音のピックアップに問題がある。(リコーダーとチューナー その2)
そのため今回は小型のマイクを使用してラビュームの至近距離から音を拾うことにする。
そこに使用するマイクだが、コンデンサータイプのラベリアマイクはファンタム電源が必要だったりXLRによるバランス伝送だったりして大げさすぎて使い切れない。安価なエレクトレットマイクが使えればよいのだが、チューナーが、エレクトレットタイプに対応していないのだ。

エレクトレットのマイクカプセルは簡単に手に入ることが判ったので、エレクトレット用アダプタも含めて作ってみることにした。
使用パーツはマイクカプセル WM-61A , 抵抗2.2kΩ, コンデンサー0.1uF, ボタン電池LR44, 3.5mmモノプラグ/ジャック、6.3mmモノプラグ、シールド線外径1.4mm 3.5mm 電池ホルダー、ヒシチューブ、プラケース。

購入した部品、右下がマイクカプセル

この種の部品は秋葉原でかなり安く手に入る、マイクカプセル2個入りで200円、抵抗100個入りで100円、コンデンサーも10個入り100円、電池10個で100円・・・etc


回路はマイクカプセルに2.2kΩの抵抗を介して1.5Vの電圧をかけること、また出力側に直流が流れないようにカップリングコンデンサーでカットすること。抵抗やコンデンサーの値はとりあえず付属の参考資料の値を使用した。電池の電圧容量も含めて最適な値かはまだわからない。回路図で点線で四角に囲った部分がプラケースに入っている。
電源スイッチを使用すべきだが、スペースがないので、マイクカプセルからの3.5mmプラグの抜き差しで代用する。
電気屋として性能、強度、ルックスを追求すれば、マイクカプセルは金属ケースに入れるべきだが、楽器に傷をつけたくないし小型にしたいので、ここはあくまで演奏者の立場を貫くことにする。なるべく小さくかつ金属部分が表に出ないように。極細シールド線をハンダ付けしたマイクカプセルは、ヒシチューブで固定して、取り付け用マジックテープに糸で縫い付けた。電池など入れる箱は角の取れた小型プラスチック製とし、3.5mm,6.3mmのプラグは高級感には欠けるが、外装が軟質プラスチック製とした。
完成したマイク一式、下地の目盛りは1cm

早速リコーダーオーケストラの練習に持ち込んでテストしてみたが快適に動作する。演奏していない時は周囲の音にも反応するが、自身の音と圧倒的な音量差があるので問題ない。取り付け用マジックテープはソプラノからバスまで使用出来る長さにしてあるが、回転したりして動いてしまうので、テープの裏側の一部にスポンジを貼るなど長さも含め、もう少し使いながら検討してみたい。

チューナー用のマイクとしては 、これでほぼ完成として良いと思う。 

実は 安く作れるとのことで選んだマイクカプセルWM-61Aは知る人ぞ知る名器なのだそうだ。6.3mmの出力プラグをチューナーからアンプに差し替えてみると良い音でスピーカーから音が出てくる。このカプセルを利用して良質のマイクロホンを作る記事はいくつかweb上で見つけることができる。

期せずして「電子(電気?)リコーダー」が完成?したわけだ。
ドイツのリコーダーメーカー mollenhauer社から電気リコーダー(Elody)が発表されている。

近代的なデザインのリコーダーにマイクロホンが仕込まれ、ケーブルを外部のアンプにつなぎ、音を大きくしたり、エフェクターを経由してちょっと変わった音を出している。面白い試みではあるが、外部のエフェクターやアンプを取り去ってみれば、本質はただのマイク内蔵アルトリコーダーだ。音域も多少広がっているが、それ程決定的な差があるとも思えない。それにかなりの値段、これなら今回工夫したマイクを取り付けたリコーダーで十分に対抗出来る。と言うよりバスリコーダーやソプラノリコーダーにも自由に取り付けられるから、可能性はこちらの方がもっと広がっていると思う。
いろいろ使って見て結果があるていどまとまったら報告するつもりです。とりあえずコンプレッサーやリヴァーブのようなエフェクターを試してみたい。

5/11/2014

リコーダーとチューナーその2 コンタクトマイクCM-200

アルトリコーダーに取り付けられたCM-200

前回, リコーダー演奏中は譜面台にチューナーを取り付け常時スイッチをONにしておくと便利であることを書いた。
この場合一人で演奏している場合は快適なのだが、何人かで同時に音を出している場合、ちょっと厄介なことが起こる。チューナーが表示している音が、必ずしも自分の音であるとは限らないのだ。
自分の音が途切れている時隣の音が鳴ればチューナはその音を表示している。自分の楽器を鳴らしても瞬時には切り替わらずちょっと遅れて表示される。
さらにリコーダーオーケストラなどで音階練習などしているときは問題が大きい。自分の音すら良く聞き取れないのにチューナーの表示が当てにならない。このような事態を回避するため コンタクトマイクロホン CM-200 というアクセサリーがある。
マイクロホンなのだが、空気の振動をとらえるのではなく、楽器に密着させその振動を直接ピックアップするのだ。そのため取り付けた楽器の振動には反応するが、空気を伝わってくる他の音には反応しない。
ちょっと大きめな洗濯ばさみのような形状で、内部にはピエゾ素子が埋め込まれており、これが楽器の振動を電圧の変動として送り出してくるのだ。早速購入して使って見た。結論を先に言うと、これは残念ながらリコーダーには使えなかった。

ソプラノリコーダーでもこのマイクを取り付けるのにちょっと苦労する。運指の邪魔にならないように足部管か頭部管の窓の下に取り付ける。リコオケの練習時に持ち込んでみた。
他の楽器が鳴っても全く反応しない。音を出してみると赤いLEDが点灯し、針がスッと上がってセンター付近に止まると緑LEDが点灯した。「オ、これはいい、成功だ」と思ったのもつかの間、反応しない音がいくつかあるのだ。アチャー!

足部管にコンタクトマイクをつけた場合、左の指孔を全部ふさぎ、右手の指孔をいくつかふさぐような音はピックアップできるのだが、右手を使用せず左手の指孔だけををいくつかふさぐような音はピックアップできない。また頭部管へ取り付けた場合は(写真)、左手だけの運指の場合良好だが、右手も使う運指の場合反応が鈍く場合によては動作しない。
理由としては管の中の空気が振動しても、木製の管はそれ程強くは振動しない。それと振動しても空気の振動が近い場所に限られ、離れた場所へ届く振動は木質の内部損失によって弱くなってしまうと思われる。このことは「木質材料の違いでリコーダーの音色が変わる」とする、まだこのブログで結論を出していない問題とも深く関わり非常に興味深いのだが、今回はちょっと保留する。

もちろんこの現象はリコーダーだから起きるのであって、ヴァイオリンやチェロ、あるいはトランペットなどの金管楽器、フルートやサキソフォーンなどの金属製木管楽器では快適に使用出来るはずだ。オーボエやクラリネットはひょっとして不具合がおこるかもしれない。

リコーダーでこの問題を回避するには楽器の振動ではなく、ラビュームの至近距離からマイクロホンで集音すれば良い。このような目的で使用する小型マイクはラベリアマイクと言われ殆んどコンデンサー型でファンタム電源を必要とする。性能は良いが大げさすぎて価格だって最低でも5000円程度から数万円まで、チューナー本体の数倍から桁違いまで、とても使いきれるものではない。安価なエレクトリックマイクが使用できれば良いが、このチューナーは対応していない。

いっそエレクトリックマイク(ECM)が使用できるよう工夫をしてみよう。部品も意外と安く入手できそうである。次回はECMを使用した報告を書く予定です。

5/04/2014

筑波山のグライダー

筑波山上空を飛行するグライダー

孫たちと一緒に筑波山に登ってきました。ケーブルカー利用です。
平地から見た山容は高さこそ低めですが堂々とした独立峰でさすが日本100名山だけのことはある。混んでいたけれど新緑が美しかった。

頂上でびっくりする光景に出会いました。
上空をグライダーが飛行していたのです。山の斜面に当る気流を利用しているらしく1時間以上も往復を繰り返していました。
途中でもう一機姿を見せ、並んで飛行するなどの場面もあり、思わず何枚も写真を撮ってしまった。

・・・。50年以上昔、私は飛行機少年だった。模型飛行機の競技会に入賞して副賞でグライダーに乗せてもらったことがある。
昔の新潟飛行場の端のほう阿賀野川に近い場所にグライダーの発着場所があった。セコンダリーと呼ばれる中級機で、操縦はもとゼロ戦パイロットとのことだった。アメ車でワイヤを引っ張ってもらい上昇した後切り離して数分間の飛行だった。・・・・

私は興奮して空を指差し「グライダーだ!」と何度も叫んだのだけれど周りの人は「無人機じゃないの」などと平然としている。山頂は人で込み合っていたけれど「ガマの油売り」の口上に気を取られ、グライダーに全く無関心な人々が殆んどらしく見えたことが大いに不満だった。すばらしい光景なのに。

白い機体に長い主翼、見ただけでドキドキしてしまう。同じように風力発電の風車、白く細長い回転翼も見ているだけで気持ちが良い。

リコーダーとチューナーその1

譜面台に取り付けられたチューナーCA-40

リコーダーを演奏している時は常時チューナーを使用している。

合奏の前に各楽器で音出しをするのだが、他人の音を「高い!高い!低い!低い!」などと決めつける人がいる。男性に多いような気がする、よほど自信があるのだろうと思うが、リコーダーで常に正しい音程を維持するのは、結構難しいと思う。

一般的に楽器が冷えていると音が低く、温まると高くなるといわれているが、これは正確な表現ではない。
楽器としての管の長さは、温度が上がれば、理屈上は少し伸びるはずだが、微小なのでここでは無視できる範囲と考えられる。ところが空気の中を走る音の速さは温度上昇の影響を大いに受けてしまう。これが音程の変わる主原因なのだ。

また寒い季節など、楽器が冷えているので、442ではなく440で合わせましょう。などと言われることがある。しかしこれも正確に言えば。楽器の中の空気が冷えているので・・と言うべきだ。音の高さを決定するのは、管の中の空気である。
まあ管が冷えていれば空気も冷えていると考えるのが一般的ではあるが。

ではなぜ空気が冷えていると音が低くなるのか。そしてどのくらい変化があるのだろう。

音の速さと温度の関係は 音速(m/sec)=331.5+0.61t (t は摂氏)の近似式を使用する。
また 音速(m/sec)÷周波数(Hz)=波長(m)  の関係である。

気温は20℃ 話を簡単にするためA管のリコーダーを考えてみる。(穴を全部ふさいで音を出すとA音442Hzと考える。実際には存在しない楽器)
20℃での音速は、331.5+0.61x20=343.7 m/sec
 したがって442Hzの波長は  343.7÷442=約0.778(m)  
管の長さは開管の場合波長の1/2 で有るから  0.778÷2=0.389(m)  この楽器の管長は0.389(m)であるはずだ。
開端補正などはここでは無視する。

ここで気温が急激に下がり、10℃になったとする。
10℃の音速は、331.5+{0.61x10}=337.6 m/sec  
この楽器(管長0.389m)の出す音の高さは、337.6÷{0.389x2}=433.9(Hz)かなり低くなってしまう。

もし気温10℃でも442Hzを出すためには、7mm管長を短くすれば良い。
337.6÷442=0.764   0.764÷2=0.382   0.389-0.382=0.007(m)=7(mm)

あるいは440Hzで妥協できるのであれば5mmの縮小でも良い。
337.6÷440=0.767   0.767÷2=0.384   0.389-0.384=0.005(m)=5(mm)

いかがでしょう実際の感覚に近いのではないでしょうか。

したがってリコーダーの音程は常に変動していると思って間違いない。
最初の音合わせだけで音程が定まるのではなく、温度変化に伴い常に変動しているわけだ。もちろん自分の耳で聞き分けるのが基本だけれども、
チューナーの指示は大いに参考になる。

私はKORGのクロマチックチューナーを使用している。メトロノームのような余計な機能がなくチューナーのみに徹しているのが使いやすいと思う。金具で譜面台の下側に吊るせるようにしてあるので楽譜が隠れることはない、電池は充電出来るニッケル水素電池を使用しているので電源を入れっぱなしにしても、電池代金の心配は不要。

これで演奏中も音程を確認できる。ただこの方式にも少し問題があって、チューナーのマイクが周囲の音も拾ってしまうので、リコオケなど多くのリコーダーが鳴っている場合は、他の楽器の音を測定している場合もあり混乱してしまう。

KORGにコンタクトマイクロホン CM-200 があり、これはピエゾ素子を使用して空気の振動ではなく楽器の振動を直接拾うマイクなので他の楽器の音はシャットアウトできる。 このような目的にはぴったりのアクセサリーと思えるので、次回はこれを使用した報告をする予定。